2019年9月8日(日)~2019年9月9日(月)にかけて台風15号が関東地方を襲ったのは記憶に新しいことだ。
伊豆半島をかすめて相模湾を通過、横須賀市内に上陸してそのまま東京湾を抜けていった。
上陸しても勢力が衰えず、我が家のある町田でも経験したことのないレベルの風が吹いて大きな音がするやら自作の小屋や庭木が心配で夜も眠れなかった、幸いなことに当初の予報より台風が東にそれたことで我が家は大きな被害を免れた。
翌9/9~10にかけてTwitterで情報をチェックしていたら次々と直撃を受けた地域の凄惨な写真が上がっていて衝撃を受けた、しかしTVや新聞などのメディアでそういった情報が見られたのは9/10.11~のことで実際に起きている災害状況の大きさはほとんどの人は遅れて知ることになった。
9/10~12にかけてTwitterやFacebook上で被災地からの停電や水道がでない、物資がないといった情報が次々とあがってきて居てもたってもいられなくなった。
10数年前に日本一周の旅をしてどの県が好きかと言われたら上位にあげるほど千葉県、特に房総半島が好きだ。
房総半島は海も山も自然が本当に豊かで何度も足を運んでいる
なんとか現地の力になりたいと決意したのが9/11深夜
恥ずかしながら今までの大きな災害で、実際に現場入りを強く決意したのは今回がはじめて
検索したらこのHPにたどり着いた
多くの市町村が千葉県・当該市在住の方という記述があって、目を疑った。
県外の人間は受け入れないのか?対応もとてもまどろっこしい
納得が行かず、幾つかの市に連絡するもボランティアセンターが立ち上がっておらず受け入れができないという返事、気持ちは既に現地に行ってるのに何もできない
自分と同じような気持ちになった多くの人は、動き出そうとしても、この段階で諦めてしまうのではないだろうか?
市によって募集するしないがあるのはいいとして、市によって対象が大きく違うというのは如何なものか、そして電話連絡しても受け入れられないという返事、大抵の人は諦めてしまうだろう。
幸運なことに友人の一人が現地入りして災害支援に行くという投稿を見て便乗させてもらうことになった。
すぐにでも現地入りしたい気持ちがあったが9/13~14は仕事が抜けられないので、9/15からの参加となった。
行くにあたって泊まる場所もないので車中泊前提の装備、予想しうる範囲のものを全て車に詰め込んだ、普段から載ってるキャンプ装備に加えて1週間分の食料、水80L、工具類に丸鋸、電動チェーンソー、電工リール等などフル装備!(車載インバーターで動作確認済)
9/14 仕事を終えてその足で房総半島へ
2019年9月14日現在 富津市 富津中央I.Cより南に数キロ南に行くと信号も街灯も付いてません
— 幸 [田舎暮らしと旅写真の備忘録] (@road_explorer_) September 14, 2019
現地入りしている友人2人と合流、友人繋がりのシェアハウスに泊めて頂けることになった。
翌朝鴨川市のボランティアセンターへ
友人が災害支援団体の方と知り合いだったおかげで、スムーズに現場へ
友人が居なかったらこの現場にたどり着けていたかすら謎だ
基本的にボランティア受付をして集合時間までに集めていたニーズ(被害がある家庭に行って状況聞き取りしたもの)に沿って集まったメンバーを割り振っていく、その日初めて会った人達と5人くらいのチームを組んでニーズが出た現場に行くことになる。
この日の作業は壊れた屋根、雨漏りしている箇所にブルーシートを張って応急的な補修を5.6軒してまわった。
本日は屋根の応急的な保護作業をしてます。
現地の予報は今夜から大雨だったが、小雨程度の予報に変わって良かった
災害支援に北は北海道、南は九州から熱い男たちが集まってます! pic.twitter.com/CoY45oz25c— 幸 [田舎暮らしと旅写真の備忘録] (@road_explorer_) September 15, 2019
屋根の上に登ることになるので脚立が必要になる、準備してきた物の中に脚立がなかったのが悔やまれた。
現場ごとにリーダーが決められていて的確な指示を出してくれたので、災害支援がはじめてでも数回の現場で大まかな動きは理解できた。
本職の大工や職人でなくともある程度D.I.Y等の経験があるなら、数回の現場を経験したら役に立てることが分かった。
午前中の現場のリーダーの方は札幌から一泊二日で災害支援に来ていて感銘を受けた。
他にも熊本・佐賀の災害支援の現場からかけつけた方、関東近郊から日帰りで駆け付けた方、熱い気持ちをもった方ばかりだった。
ボランティアセンターに戻るとボランティア活動証明書・ボランティア車両証明書が貰えた。
ボランティア車両証明書は高速道路料金が復路に限り免除されるもの、翌日も支援作業をする気だったので明日改めて貰いますというと明日はボラセンは稼働してないから出せないとのこと、一緒になったメンバーは100%県外の人間であったがそもそも泊りで来ることを想定していない、連日災害支援に入ることを想定してない
うちのグループ以外のメンバーはそれぞれ日帰りで帰路についていった。
この日(15日)夜半から強い雨が降って、時々豪雨になって翌日昼過ぎまで降り続いて翌日の作業は中止となった。
ブルーシート張りが間に合わなかった家のことを思うと気が重くなった。
以上が災害ボランティアに参加した記録です。
以下に災害ボランティアに参加して感じたことを挙げていきます。
※数日現場を見ただけなので、実際のものと異なる場合が少なからずあるとおもいますがいちボランティアとしての目から見たものです
1.災害支援ボランティアセンターはオーバーワーク
ボランティアセンターは各市町村の社会福祉協議会(以後 社協)が立ち上げることになっているが、現地で様子を見た感じだと
社協の仕事は
災害支援ボランティアセンター(以後 ボラセン)の立ち上げ
支援物資の受入・搬出の手配
災害状況の把握・現場の実踏
ボランティアメンバー(自衛隊含)の集計・分配
老人福祉・障害者福祉、地域福祉などの通常業務の延長にあるもの
その他多数、見えてないものも多数
少し接しただけでもこんなハードワーク
被災者にこんなオーバーワークを強いているのだ
これをソツなくこなせる人材はスーパーマンだ
そもそも福祉系の人間としては社協が災害ボラセンを総括していることに驚いたと同時に、
「さばききれるのか?」という疑問をもった。
災害ボラセンを立ち上げるのが遅いというのは簡単だが、その立ち上げする人間にも日常はあるのだ、現状の仕組みでは遅くなって当たり前である。
普段地域福祉の業務にあたっている人材は地域の様子には明るいが、災害現場で職人がやる仕事がどんなものか把握できているとは考えづらい、まず災害が起こったら状況確認の実踏をする際に地域に明るい社協の人間と、現場を見てまずどんな補修をしたらいいかを判断できる人間とのペアでいけば、被災者は顔がわかる相手と安心して話しができて、かつそこでとった記録をもとに必要な人材と資材をもって現地に向かうことができる
そんな社協のサポートをする為に災害支援団体(今回鴨川市で関わっているのを見たのはNPOの団体)が存在するのだろうし実際現場で彼らが大きく貢献しているのを見たが、もっとうまく回せないか?という疑問も残った。
必要なのは受け入れ側の体制
彼らは災害対策のプロだが、被災した地域のプロではない、地域に詳しい人材が彼らのサポートに入るのが必要不可欠だ。
災害支援は一刻を争う、今回も夜から大雨が降るという対策が急がれる状況だった。対策を早くできれば穴が開いた屋根の下で怯える人を一人でも多く救えた可能性はあった。
例えば避難訓練の形を変えて、災害支援団体や有志のボラを集めて、今回のような風害があった前提の大規模な災害対策訓練をしてもいい。
そして日本には東日本大震災や阪神淡路大震災のような大きすぎる前例が幾つもあるのでその現地の体験者の方からのノウハウは大きな学びになるだろう、そしてその前例を踏まえた上での訓練を行えばはきっとどんな災害にもある程度対応できる。
何事も想定外にするのでなく1度でも想定をした訓練をしておけば初動も大きく違うだろう。
市町村だけで終わらず横の連携が取れる仕組みを作っておいて被害が軽いところから酷いところに支援が行く形にすれば(当然県外とも)おのずと負担も軽くなって結果、本来の社協の強みである地域との繋がりを生かした災害支援にも繋がるだろう。
地域に詳しい動ける人材というのが地域には必ず居る。彼らに平時から災害ボラセンのサポーターとして動けるような体制作りの必要性も感じた。
それにしても比較的スムーズに回っていたという鴨川市でこの状態なので他市の対応はどんなものだっただろうか
最悪を想定した訓練、最悪の状態でもなんとか稼働できるシステム作り
そもそも毎年未曽有の大災害が起きているこの国に、その対策をする組織が当座でしか存在しないというのはどういうことなんだ?
対策する専門チームがあってもいいだろう(当然形だけでない専門家の集まり、災害支援団体がそれを担える?)
絵空事のようなことだという人もいるだろうが、未曽有の大災害が毎年起きている日本で、一人でも多くの人命・生活が救えるならそんな理想に近いの災害支援も夢でははないだろう
自然災害の多い国なのだから、トップレベルの災害支援ができる国になってもいい
2.災害ボランティアは有償でいい
この写真を見て どう見てもプロが工事をしているように見えるだろう
実際は有志が乗り付けたゴンドラ付きのユニックに乗ったボランティア
自分は福祉系の人間であるけれど、日本のボランティアの認識にはかなり違和感を感じている。
無償であることが尊い、なんてことを言う人がいるが
価値ある行動をしている人に対価が支払われること、これはあたりまえでないか?
自分の日常や仕事をさしおいて災害支援に来ている人に交通費すら出さない、大災害に対する災害支援をしているのだから復興予算を組んでそこから行動の対価が支払われてもなんら不自然ではないはず。こんなクリアな使い道はないだろう
当然状況が進んでいけば、家などを直す大工や職人を呼んで対価を払って作業を頼む、それと雨ざらしの家を当座でもしのげる対策をする作業は、何が違うのだろうか
ゴミの回収や、資源の回収業者、それと災害がれきを運搬することに何の違いがあるのだろうか
仕事を休んでボランティアに行く、一般社会人にはこのハードルが高くて災害支援に行けないという人が多数だろう
時間のある人が行くボランティア、ではなく有償の自分の力を活かしたいと思っているプライドをもった人が行くボランティアでいいだろう
災害は物資やお金は一定の時間が経つと供給過多になるが、人材は時間とともに減っていくという、それを止めるためにも有償化は必要不可欠だろう
まず優先的に専門職の人材を有償にして派遣、交通費からしっかり出せる仕組みから!
3.災害ボランティアの受け入れ体制
行きたい、支援をしたいという人間が動きやすい仕組みを作る。
今回も友人に便乗できなかったら現地の災害ボラセンにたどり着けていたかすら謎だ、連絡先にある窓口は現地にある。
当然、現地での窓口は必要だが手が足りずに混乱するのは目に見えてるので市外県外からの人材用の窓口を別に設けることは急務だ、現状は現地に人が足りないのに簡単にはたどり着けない仕組みになっている。
全国でなく、関東、中部などのある程度大きなくくりでの窓口をHPで作り、登録時に能力の記載箇所(軽トラ持ち出し可、高所作業可、作業工具持ち出し可等)があった方がいい。
そしてHPはお役所仕事のカタブツなものでなく、登録する側がめんどくさくならない視覚的で使いやすいものである必要が。
(職人気質はまどろっこしいのが嫌いです)
その上で現地からの要請があったら派遣できる仕組み、例えば登録した上で災害が発生した時にHP上に現地にどの程度人材が必要か表示されてそこに「明日行けます」「明後日行けます」というようなボランティア受付ボタンを押し、返信が来る仕組み。
書いていて気づいたがまるで派遣の仕事なので既存の派遣会社がこれを担えばいい、当然有償ボランティア前提で。
そしてこういうシステムが稼働してスキルのある方(現場向け)とそうでない方(自分含)の棲み分けができれば、結果的に二次災害や事故も減るだろう
現在似たような仕組みがあるとしたら足りないのは圧倒的に認知度と行政との連携だろう
現状として台風15号の災害支援はまったく終わってません、動ける人手が足りていません
自分が見た限りでは東京湾沿いの富津市から南の地域の被害が特に酷く、物資を配ったり、屋根にブルーシートを張ったり、土嚢をつめたり、それ以外にも多くの人手が必要とされています
時間とともに現地の受け入れ態勢も整ってくると思うので、災害支援に行くならまだまだ間に合います。
何かできることを…。と思ってしまいがちだけど、現地に居ないとできない支援、遠くに居ないとできない支援がある。
できる範囲の得意なことをして適材適所でカチッと収まればもっとうまく災害支援の現場も回るのではと願っています。
ここに書いたことは千葉県に限らず全国の自治体で起こりうる事象です、普段からの対策が有事の際の動きに大きく関わってくる。
千葉県は比較的地域のつながりが強い地域だ、これが都心部で起きたらどうなるだろうか、地域として人のつながりの乏しい都心部での大災害、想像にたやすい
今からでも地元が災害時にはどのような状態になるのか、どんな対応がされるのか、一人一人が自覚すべき時です。
何かにクレームをつけたり、文句をいうことは簡単ですが、起きた問題から何を学んで生かせるかを考える、何かを変えるには1人1人が意識を持って自身の身の回りから変えていくしかないでしょう
SNSに投稿して、いいねを押して指先だけ動かして終わらせず、その気持ちを行動につなげていこう
自然災害は対岸の火事ではない、日常の隣にあります。
僕らにできることはまだまだあります